産業適用のための物性再設計
バイオマス素材それぞれの弱点を分析し、異なるやり方で再設計します。
何がロジンを阻んできたのか
建築用塗料——ここでバインダーとして使います。ロジンは松から得られる天然樹脂です。安価で大量に供給され、接着力にも優れます。それでも高性能塗料のバインダーにはなれませんでした。三つの弱点があるからです。
分子内の二重結合が酸化し、時間とともに色が濃くなります。
構造に残る酸性基が水を引き寄せ、塗膜が水に弱くなります。
骨格が硬く短いため、力を受けると伸びずに割れます。
何が崩れ、何が支えるのか
同じ壁、同じ紫外線、同じ水です。変わるのはバインダーを改質したかどうかだけです。
- 基材(壁)
- 塗膜 · バインダーマトリクス
- 水
- 安定化した箇所
- つないだ鎖
- 樹脂粒子
ロジンの骨格は硬く短い。力を受けると伸びずに割れ、その隙間は塗膜を通って壁まで続きます。
構造に残る酸性基が水を引き寄せます。表面で広がった水は塗膜を通り、基材に達します。
分子内の二重結合が酸化し、塗膜全体の色が時間とともに濃くなります。
転相乳化で微細に分散した樹脂が塗膜の中に均一に位置します。割れはここでエネルギーを失い、進行が遅くなります。完全に止めるという意味ではありません ——壁に達するまでの時間を延ばすということです。
常圧で、触媒と熱だけで二重結合の箇所を安定化します。高圧水素化設備は使いません。
中間精製を挟まず反応させ、分子を大きくして酸性基を減らします。水は表面で玉になりますが、右端のように浅く染み込む筋は残ります。
どのような工程でつくるのか
Oceanable はロジンを常圧で扱います。高圧水素化設備に頼らず、中間精製の工程も置きません。工程が短くなるぶん設備とエネルギーの負担が減ることを設計目標としました。
高圧水素化設備を使わず、触媒と熱だけで酸化しやすい箇所を整えます。反応は大気圧で進めます。
中間精製の工程を置かず、そのまま反応させて分子を大きく育てます。酸価が下がり、軟化点が上がります。
溶かした樹脂に水を入れて相を反転させます。有機溶剤を使わずに水へ分散した状態にします。
S3 を拡大すると——相が反転する瞬間
水分散は樹脂を水に溶かすことではありません。つながっていた側が樹脂から水へ変わるということです。
初めは樹脂の側が連続相です。入れた水はその中に滴として閉じ込められています。
水を入れ続けると、樹脂と水が互いに通じる区間を通ります。反転はこの区間で起こります。
相が反転して水が連続相となり、樹脂は微細な粒に散ります。有機溶剤は使いません。
設計目標
- 色
熱に長く置いても色が濃くなりにくいことを目標とします。塗料の寿命のあいだ色を保つための条件です。
- 水
酸性基を減らし分子を大きくして耐水性を確保することが設計の方向です。
- 膜
軟化点が上がって常温では硬く、それでいて塗膜として固まったときに使える物性を出すよう定めました。
- VOC
有機溶剤の代わりに水へ分散させる方式のため、揮発性有機化合物の放出を下げる方向で設計しました。
- 設備
常圧工程と精製の省略により、高圧設備なしでつくれます。
何がアルギン酸を阻んできたのか
紙バリアコーティング——ここで使います。アルギン酸はワカメや昆布などの褐藻から得られる天然多糖類です。鎖がまっすぐ伸びた線状構造で、コーティング液やフィルムの原料に向いています。それでも紙容器の内側のコーティングは、これまで石油系プラスチックが占めてきました。
紙の食品パッケージの内側には主にポリエチレンを使います。紙が分解しても、この層は細かく砕けて残ります。
鎖が水を強く引き寄せます。そのままコーティングすると、水が鎖の間に入り込んで層が膨らみます。
これまでの生分解性コーティング膜は機械的強度が足りず、折れ曲がり押される箇所で割れました。
鎖を何でつなぎ止めるのか
同じ紙、同じアルギン酸、同じ水です。変わるのは鎖をイオンで結んだかどうかだけです。
- 紙(基材)
- バリアコーティング層
- アルギン酸の鎖
- 金属イオン(カルシウム · マグネシウム)
- 水
アルギン酸の鎖はまっすぐ伸びていますが、互いをつかみません。層は鎖がただ重なっただけの状態です。
鎖が水を強く引き寄せます。水は鎖の間の空きをたどって紙まで下ります。
水を含んだ層は厚みが不均一になります。バリアとして使いにくい状態です。
カルシウムまたはマグネシウムのイオンを吹き付けると、イオンが鎖の間に入って二本を一組に結びます。鎖はもう別々には動きません。
結ばれたぶん鎖の間隔が狭まります。水は表面で玉になります。完全に止めるという意味ではありません ——右端のように浅く染み込む筋は残ります。
コーティングと架橋を 2〜3 回くり返して層を積みます。一度に厚く塗る代わりに、薄く何層も重ねます。
どのような工程でつくるのか
アルギン酸水溶液に必要な成分を混ぜてコーティング液をつくり、薄く広げたうえで、イオンを吹き付けて固めます。熱で焼いたり有機溶剤を使ったりはしません。
アルギン酸水溶液に増粘剤・植物性酸化防止剤・可塑剤・触媒を混ぜ、常温でまず解いてから、続けて加熱しながら攪拌します。
紙の上に数十マイクロメートルの厚みで均一に広げます。増粘剤が粘度を保ち、厚みがぶれないようにします。
カルシウムまたはマグネシウムのイオン溶液を吹き付け、熱風で乾かします。これを 2〜3 回くり返して層を積みます。
S3 を拡大すると——イオンが鎖を結ぶ瞬間
架橋とは鎖を化学的に新しくつくることではありません。すでにある鎖二本の間にイオンが入り、両側を同時につかむことです。
水の中で、アルギン酸の鎖は互いをつかめず離れています。
吹き付けられた金属イオンが、鎖二本の間の位置に入り込みます。
イオン一つが上下の鎖をともにつかみ、間隔が狭まります。層全体が一つに結ばれます。
設計目標
- 水
イオン架橋で鎖の間隔を狭め、水に対する接触角を高めることが設計の方向です。
- バリア
薄い層を 2〜3 回積み、水分の通る道を短くします。
- 膜
可塑剤で柔軟さを残し、折れ曲がり押される箇所で割れないようにしました。
- 保存
植物性酸化防止剤を入れ、保管・流通中の酸化を遅らせます。
- 分解
土壌の酵素と微生物による堆肥化で分解することを前提に設計しました。
- 置き換え
紙の食品パッケージの内側にあるポリエチレンコーティングに代わることが目標です。
印刷面の上に重ねるコーティング
OPV(オーバープリントニス)——ここで使います。印刷物と包装材の表面を覆い、保護・質感・光沢を担う場所です。Oceanable はこの場所を石油系樹脂ではなく天然樹脂で満たします。
どの天然樹脂を使うのか、どのように改質するのかは公開しません。適用分野と製品名のみをお伝えします。
技術資料が必要な場合は協業のお問い合わせよりご連絡ください。秘密保持契約のうえ、別途ご案内します。